アンコール文明を科学する
監修 上智大学外国語学部教授 石澤良昭 季刊文化遺産第18号
2004年10月
かつて、大湖トンレ・サップの北西にあって東南アジア世界に覇を唱えた王朝があった。それがアンコール王朝である。9世紀から14世紀にかけて繁栄したアンコール王朝を築いたクメール人は、優れた祈りの造形を創り出した人々であった。最盛期には、アンコールは50万もの人口を抱えた大都城となった。その都城には巨大な石造建築が次々と築かれ、王宮や 600以上の大小寺院は絢爛な浮彫りや彫刻で飾られ、灯燭が供されていたという。アンコール・ワットは、その最大級にして最高の芸術的価値を持つ寺院である。